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六本木に足を運ぶ用事がなければ、見にいかなかったかもしれない。
それが、見終わってみれば大きな満足感でいっぱいだったのだから、何らかの縁があってここにやってきたのではと思い込みたくもなる。
ただいま森美術館で開催中の『アイ・ウェイウェイ展─何に因って?』
中国人クリエイターのアイ・ウェイウェイが中国で起こっていること、起きてしまったことをさまざまな表現手段を用いて鋭く、ときに痛快に見せてくれる。
しかも、記憶にどっしりと残りそうな重量たっぷりの作品が多いのも、見ごたえがあって面白い。
この展示を見て、すでに彼の作品には出会っていたことを知る。
北京オリンピックのメインスタジアム、通称『鳥の巣』。あれも彼が制作に携わったものだった。


展示の順路をたどって紹介したいのはやまやまだが、それではこれから見に行く人の楽しみを奪ってしまうのでとくに気になった一部をご紹介。
お茶の葉を固めたブロックでできた家は、敷き詰められた芝生然とした庭も全部お茶。
いつも慣れ親しんでいるお茶がお茶のようには見えなくなってくるこの一軒家、メンテナンスしているキュレーターの姿があるだけで、無機質なたたずまいからちょっぴり印象を変えた。

連続して整然と並ぶ巨大な箱には、中心から外れた場所に2カ所、穴が開いている。
前を歩く人がやっていたとおりに穴の前に立ってみると、月の満ち欠けがはるか先まで続いているように見える。
この作品の名前は「月の箪笥」。
カリンでできたタンスの中に広がる小宇宙は、不思議な奥行きを感じさせる。

自転車が人間なしで曲芸に挑んだ!? と思ってしまいそうな作品に使われているのは、かつて中国人の「足」として羨望のまなざしを浴びていた、その名もFOREVERという自転車。
永遠という意味が空々しく響くその自転車たちからは、フレームの軽やかさとは対照的な、感傷的でずしんと心に何かを訴えてくる叫びが聞こえてきそうだ。


ほかにも、丁寧な木組みの清時代の家具がありえない形になっていたり、漢時代の壷を床に落とす瞬間を写真に収めてみたり、思い出しただけでもゾクゾクする作品がいっぱいだった。
11月8日まで開催中なので、六本木にお越しの際は散策コースに森美術館を追加することをお忘れなく。

興奮して熱くなっている頭を冷やすために、というわけではないが、もうすぐ終了してしまう天空の水族館、スカイ アクアリウムIIIも覗いてみる。
足を踏み入れた途端、暗闇で色とりどりにきらめく水槽の数々にはまいった!
鏡を使ってはるか遠くまで水槽が続くように見せる空間の妙も去ることながら、一つひとつの個性豊かな水槽も素晴らしい。
子供と同じような素直な驚きの表情を浮かべた大人たちの顔を、水槽を彩る照明がぼうっと照らしていたのが印象的だった。

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2009.9.24 六本木

Join the discussion 2 Comments

  • 澄さん。加奈子さん。
    中国は料理と歴史だけなんて思っていたら、モダンアートなんても有りなのですね。お二人に刺激された私達夫婦が先頃スイスのバーゼル市の近くのドルナッハ村?にある、ルドルフ・シュタイナーの建物を見たり、迷子になりながらフランスのロンシャン(競馬場とは関係有りません)でコルビジェの方舟風の教会を見物・見学・観賞などに行ってきました。この両方の建物は決して新しくは内容ですけどセンスは新しいですね。今度自宅を改築するチャンスが有ったら(無さそうだけど・・・)こうした建物なんか良いかもしれませんね。両方のミュージアムショップでエンゼルを売ってましたので買ってきましたけどお暇な折に見に来てください。

  • かな子 より:

    ■ポンチのお父さん
    近頃の中国はものすごく勢いがありそうですね。
    と同時に、これまであった古いものがあっさり取り壊されているのが、少々残念な気もしますが……。
    ロンシャンの礼拝堂を見にいったなんて、とてもうらやましい限りです。いつかはヨーロッパ建築巡りの旅もしたいですが、しばらく後になりそうです。
    改築してロンシャンの礼拝堂風になったら、観光客が大挙して押し寄せるかもしれませんね(笑)。

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