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インドの紅茶と言われて思いつくのは、ダージリンにアッサム、そしてニルギリ。
かわいらしい蒸気機関車、トイ・トレインでも有名なダージリンがインドの東北部にあるということは知っていたけれど、ほかのふたつはどこにあるのだろう。
きっと涼しい気候の場所に違いない、と思って調べてみたら、アッサムは同じ東北部なのに対してニルギリは南にあった。
あれ? 南インドってバナナとかヤシの木とか生えている、暑い地域じゃないの?
さらに調べていくとニルギリは標高が2300mほどの高原地帯で、避暑地としてインド人に人気のスポットで、さらにトイ・トレインのような登山列車も走っているというし、それが世界遺産に認定されているそうだし、これはなかなか面白そうなところだ。
ただいま酷暑季でツーリストが少ないこの時期にあって、ニルギリは観光シーズンにちょうど突入したところ。
もう、これは行くしかない!


標高が高い地域に行くための機関車だから、上り列車に乗って徐々に植生が変わっていく様子などを楽しみたいところだが、バンガロールからでは上り列車へ乗るためのアクセスが悪く、バスで向かうのであれば拠点の街、ウーティへの直行便が朝と夜に出ている。
下り列車に乗れば同じ景色を見られるからいいじゃないかと自分を納得させて、朝9時半発のバスに乗る。
午後になると、窓の外には発光しているほどにまぶしい緑一色の茶畑が広がり始める。
くねくねした山道を進んで野生動物保護区のムドゥマライ国立公園を過ぎたあたりで、野生の親子ゾウが出現。
かわいらしいというより、荒々しくてちょっぴり怖かった。
予定より1時間以上遅れて、19時過ぎにウーティへ到着。
外にいるのは、ニットキャップにセーター、ウールのショールを被った人たち。
晩秋のような寒さにぶるっときて、バックパックから急いでレインジャケットを取り出して羽織る。
よさそうな宿を見つけて室内を確認させてもらうと、これまでのインドの宿では欠かせなかったファンがなくなり、ベッドにはふかふかの毛布がセッティングしてある。
まさか南インドまでやってきて毛布のお世話になるなんて、とちょっぴり不思議な気分になりながら、あたたかい毛布にくるまって眠る。


翌日、外出してみるとどうも外の様子がおかしい。
ほとんどのお店がシャッターを下ろしていて、かろうじて営業しているのは旅行代理店ぐらい。
いったい何があったのか聞くと、ストライキだという。
困ったぞ、今日は列車の座席予約や付近の村や茶畑へトレッキングするためのガイド探しなど、いろいろ用事を済ませたいところなのに。
それでも駅はちゃんと開いていて、無事予約を済ませると上り電車がもうすぐ到着する時刻。
せっかくだから見学していこうと、ホームで列車がやってくるのを待つ。
やってきたのは蒸気機関車ではなく、ディーゼル車。
煙を吐き出してくるものだと思いこんでいたのでその点は残念だったけれど、江ノ電ほどの小ぶりさはなかなか愛らしい。
2日後にはこれに乗るんだな、と最後尾から最前列までしげしげと眺めて事前チェックは万全。

もうひとつの懸案事項であるトレッキングガイド探しだったが、これが面白い結末になった。
ストのせいでガイドを見つけられなかったので宿のスタッフにどうしたらいいか相談したら、紹介するから大丈夫という返事が。
知り合いでも連れてくるのだろうと思っていたが、夜になっても一向に紹介してくれる気配がないのでしびれを切らしてどうなっているのかを尋ねると、「あとで」の一点張り。
なんか怪しいぞ、と思っていたら部屋の内線が鳴り、ガイドらしき人物からだった。
「今、フロントにいるから会おう」と言われて行ってみると、そこにいたのは宿泊客であるインド人の青年、ガネーシュだった。
インドで大人気のゾウの神様と同じ名前を持つ彼は、ウーティで生まれ育ち、大学を出てインド国内を旅している最中で、友人とこの宿に泊まっているという。
だからプロのガイドというわけではないのだが、案内できそうな人間がいるからきっとガイド役を引き受けてくれるだろう、という宿のスタッフの柔軟すぎる対応によって我々は出会うこととなった。
翌日はトダ族という少数民族の村で行われる祭りを見に行くというので、それに同行させてもらうことになった。
ガネーシュの友人であるスペイン人のヴェロニカ、イスラエル人カップルのオーリーとリーラを紹介してもらい、彼らにいっしょに行きたい旨を話すと「ぜひ!」と歓迎してくれた。
翌朝、活気の戻ったウーティの街を11時過ぎに出発。
ぎゅうぎゅうのローカルバスに乗り、着いたのはインド人の家族連れでにぎわう小高い丘。

でも丘には登らずに脇の道をせっせと歩き、にぎやかな声も聞こえなくなってきて、そのうち勝手に民家らしき敷地内へと進む。
柵を乗り越え、畑の中を通り過ぎ、農作業中の人にあいさつをして、それでもまだまだ先へと行く。
心臓が悲鳴を上げそうなきつい山道を登り切ると、ガネーシュが立ち止まってあれ? という表情を浮かべている。
祭り会場と思ってやってきたものの、誰もいない。
彼がひとり近くの村へ情報を聞きに行っているあいだ、思い思いに休憩をする。

ガネーシュが戻ってきて、別の道から下り始める。
別のところに場所が変更になったのかなと思っていたら、車座になっている男性の集団が見えてきた。
どうやら彼らこそがトダ族のようだ。
刺繍の施してある白いショールに白いサロンを巻いた姿は、少数民族というよりちょっと着飾った男性、という印象だ。
どうしたらいいかわからなくて遠めに彼らをじっと見ていると、こちらに近づいてきたひとりがチャイやお菓子を振舞ってくれる。
ガネーシュに何のために集まっているのか聞くと、新しいお寺を建てるために皆がお金を持ち寄って、それについていろいろ会議をしているのだという。
我々も少し寄付のお手伝いをして、彼らのまとっているショールを見せてもらったりおしゃべりをする。

集まりがお開きになるかなと思っていると、彼らは輪になって歌い、踊り始める。
低く響く声の重なりにぞくぞくし、しばらくその様子に見入っていた。

その後、トダ族のひとりの家に招かれて、屋上でお昼をご馳走になる。
お米とカレー2種類のランチは決して豪勢なものではないけれど、彼の一家が精一杯もてなしてくれたのがよくわかるやさしい味だった。

ランチ後は付近を散歩。
ガネーシュがとっておきの場所だといって連れていってくれたところは、周囲の景色が180度見渡せる絶景ポイント。
「冬になるとここがニュージーランドだと言ってもいいぐらいにきれいなんだよ」と彼は言っていたが、今でも充分美しい。
日の光を受けてきらきら輝く川があって、木々がこんもり茂った山があって、広々とどこまでも広がる空があって。
たまにここで瞑想するという彼の言葉に従って、我々もしばしぼーっとしてみる。
草の上に寝転がっているとちょっぴり寒いけれど本当に気持ちよくて、インドにいるのにインドらしくない風景にすっかり酔いしれてしまう。
普通にガイドを手配していたらこんな素晴らしい時間も、愉快な人たちにも出会うことがなかったんだなと考えると、思い通りにいかないのが旅のいいところかもしれない、なんて気がしてくる。

ついに、登山列車でウーティを離れる。
本当にここに来てよかった、としみじみしながら座席表を確認すると、ない。我々の名前が載ってない!
車掌に予約したのにどうして名前がないんだ? と詰め寄ると、何度もリストを確認しておかしいな、という顔をしながらも「ここに座りなさい」とすぐそばにあった座席に通された。
あとで気づいたのだが、我々が予約した2日前にはすでに満席になっていたようで、空席待ちの1番、2番として発券されていた模様。
なのにすんなり座らせてくれるという柔軟すぎる対応が、やっぱりインドらしい。

たくさんの人を乗せてほぼ時刻通りに出発したディーゼルの機関車は、スピードをセーブしながらゆっくり下っていく。
谷に広がる茶畑、その中でお茶を摘む人などが遠くに見える。
途中、トンネルに入るとなぜか「ヒュー!」と拍手をしながら大歓声が巻き起こる。
子供が騒いでいるのかと思ったら大人が率先して声を上げているようで、どうやらこの列車では大人のほうが興奮しているような感じさえする。

1時間ちょっとで終点のクーヌールに到着すると、向かいのホームにはもくもくと煙を上げる蒸気機関車が!
どうやらクーヌールまでの上りの区間が蒸気機関車で、それ以降の上りがディーゼルだったようだ。
惜しい、と思ってしまうのは事実だけれど、こんなにウーティを満喫したのだから蒸気かディーゼルかという違いは気にしないことにしよう、この際。

■ ピックアップ ■
世界を震撼させているている、新インフルエンザ(豚インフルエンザ)。
ここインドでも新聞の一面に載るなど話題にはなっていますが、現在のところ感染者はいないとのオフィシャルの発表があった模様。
そんな中、渦中のメキシコに滞在中の友人sayacoさんがリアルなレポートをしています。
必ずしも報道が正しくはないということを、よーく知らせてくれているブログです。
危機感を持つのは大事だけれど、過剰反応はかえってよくない結果を招くかもしれませんね。
http://tripblog.sayacommune.com/

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2009.4.24 ウーティ / Ooty

Join the discussion 4 Comments

  • 匿名 より:

    涼しい南インド、お茶畑、可愛い列車、いいですね。
    ニルギリ紅茶のお味はどうだったのでしょう???

    豚インフル・・・私はマスクしてないのですが、「危機意識、予防意識が低い」と怒る知人もいます。捕らえ方は人それぞれと思うのですが、「より恐ろしい、来るべき「鳥インフルやパンデミックの予習と思え」と
    いうんです。このくらい報道しないと予習しないって(笑)。

    ロンドンテロの真っ只中に到着しちゃった経験がありますが、そのときも日本のものすごい報道で、こわがらせすぎ・・・と思ったんですケド。そういえば私は狂牛病がらみで、献血も輸血もできないです。

  • 桂 けい より:

    お久しぶりです!南インド、懐かしく拝見させていただいています。ウーティのトイトレイン、最高ですよね。新婚旅行客であふれかえっていました。

    また、遊びに来ます!

    P.S.
    個人的な話ですが、『道と旅人』を少しリニューアルしました。アドレスは変わらないので、これからもよろしくお願いします!

  • ガク より:

    トダ族の刺繍と家すごく気になります。
    インド人は手が器用だからか?刺繍はいいものが多いんだよね!
    GX200絶好調だね!
    いい色が出ている写真が多くて楽しませてもらっています。

  • スミサト より:

    ■chokiさん
    この街で飲めたのは結局たっぷりのミルクが入ったチャイだけでした。
    ニルギリティーは次に訪れた街、コチで飲むことが出来たのですが、苦みも少なく、控えめな色と味でおいしかったです。
    ちなみにそのお店ではダージリンが最も高級で次にアッサム、そしてニルギリの順でした。
    献血・輸血は僕も同じく出来ません、95年の夏にイギリスに滞在していたので。
    前は結構献血していたんですけどね、献血を求める場を通り過ぎる度に色々考えてしまいます。
    ■桂 けいくん
    ウーティ、行ったことあるんだね。
    インドの新婚旅行先は、涼しいところ、なんだよね。
    マナリだったり、ダージリンだったり、アッサムの近くだったり。みんな涼みたいんだなぁー。
    サイト、期待しているよ!
    ■ガクさん
    トダ族の刺繍入りの布、かなり高かったです。
    8千円とかです、元々売っているようなものでも無さそうですが。ステキだったんですが、買えませんでした。
    GX200は絶好調です、ホント良いカメラです。

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