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いいかもしれない、ラオス。
タラップを降りたときに感じた、のどかな空気。
からっと暑いけれど、時折吹く風がなんともさわやかで過ごしやすそう。
国際線が発着しているとは思えないほどこじんまりとした、ルアンパバーンの国際空港もまた、リラックスムード満点でいい。
話に聞いていた通りののんびりした印象に、出発前に思い描いていたチビオトのペースで楽しめる旅ができそうだと、まだ街を見ていないうちからそんな気分にさせられる。


さて、お迎えの車はどこかな。どこだろう。あれ、いない……?
キョロキョロしているこちらの不安げな様子を察して、ほかのホテルの送迎スタッフが、代わりに電話で問い合わせてくれる。
「もうすぐ来るよ」と言いながら見せた控えめな笑顔に、またラオス株が一気に上がる。
その後、無事にピックアップの車がやってきて一件落着。
車窓から眺めるルアンパバーンは、バンコクやハノイのように車やバイクの洪水ということもなく、至って穏やかな風情でなんだかほっとする。
でも、未知の土地にいるという興奮が、じわじわ心の奥底から湧き上がる。
ランチはぜひラオス料理を、と思って適当な一軒に入り、名物のラープ(ひき肉とミント、パクチーなどのハーブと炒めたもの)やカオ・ニャオ(もち米)、カイ・ペーン(川海苔)を頼む。
む、おいしい。箸が止まらない。
食に保守的なチビオトも、カオ・ニャオをもぐもぐ、カイ・ペーンをパリパリ、黙々と食べている。
その後も麺料理やソーセージなどあれこれ食べてみたが、どうやら旅音家、ラオス料理とかなり相性がいいらしく、そのどれもが実によく口にあうのだった。
代表料理すら知らず、完全にノーマークだったラオス料理がいちばん印象に残っているというのは、いやはや、見知らぬものとのうれしい出会いにバンザイ、である。

夕方になると、ルアンパバーンの街はいささか賑やかになる。
メコン川に落ちる夕日を見ようと、川岸にはカメラを持って人が集まり、その誰もが満足気な表情を浮かべながら、一日が終わるのを惜しむように真っ赤に染まる空を眺めている。
そのときチビオトはと言えば、感動的な夕日よりも、家路を急ぐバイクを眺めるほうが楽しいようで、完全にメコン川に背を向けていた。

暗くなってきた頃に活気を見せるのは、車道を埋め尽くすナイトマーケットのテント群。
ラオス土産の屋外ショールームには、冷やかし客あり、熱心に値引き交渉するツーリストありで活気に満ちている。
ここは夜の家族の暮らしの場でもあるから、売り子の女性が接客しながら授乳していたり、傍らでごはんを食べる子の姿があったりで、お土産探しに没頭してふと顔を上げると、そんな家族の風景が目の前で繰り広げられていてちょっぴり和む。
さあ、朝の托鉢を見るなら明日は早起きしなければ。そろそろ戻ろうか。

チビオト、今日に限ってぐっすり眠っていて起きる気配がない。
まだ朝の5時半。
無理矢理起こすのもかわいそうだし、真っ暗な中カメラと共に出かけていく背中をベッドから見送り、母子はゴロゴロしながらお留守番。
戻ってきてから話を聞くと、まだ暗さの残る静まり返った朝に、オレンジ色の袈裟を着た僧侶たちが裸足で歩いていく様が荘厳で美しく、魅了されたという。
その一方、托鉢の時間に合わせてオープンするカフェから、ひと目その様子を見ようという外国人でごった返していたこと、ツアーのプログラムとしてお布施をする団体客、托鉢で得た食べものを分けてもらおうと座っている子どもなど、いろいろ考えさせられる瞬間があったそうだ。

その翌日は、チビオトも準備万端で待機。
ちょうどホテルの目の前にやってきた托鉢の一列を眺めることができた。
我々もお布施したほうがいいのだろうか、どうしよう……、と悩んでいるうちに過ぎてしまい、もやもやした気分でその場に佇んでいたら、お布施用のバナナを売っているおばさんが、チビオトにどうぞ、と一本くれた。
子どもに対するやさしさを、ここラオスでもひしひしと感じる。
日程的に余裕を持って滞在したルアンパバーン、ほかにはワット・シェントーンを訪れたり、街を一望できる丘に登ったり、竹の橋を渡って対岸まで足をのばしたり、無理のないペースで散策を楽しんだ。
ハイライトはメコン川のサンセットクルーズ。
同乗してきたボート運転手の息子は、チビオトよりも2つ年上の男の子で、まるで弟の面倒を見るようにかわいがってくれた。
翌日、そんな兄貴が恋しくなったのか、「またいっしょに遊びたい」とでも言いたげな顔でボートを指さすのだった。

3カ国、3都市を巡るという今回の旅、このルアンパバーンがいちばん子連れ向きだと感じた。
大都会のようになんでも揃っているわけではないが、それなりに整い、子どもが自分の足で歩き回れて、そこに暮らす人とのふれあいも楽しめる。
出発前に「何もない街ですよ」と言われ、退屈しないか心配していたことに、今となっては笑ってしまう。
なるほど、イギリスの旅行雑誌『Wanderlust』で人気の渡航先として2年連続で1位を獲得というのもうなずける。
また、これまでみたいに朝から晩まで外出しっぱなしで、目一杯旅の時間を満喫、というわけにはいかず、ときには計画を変更・断念せざるをえない場面もあったけれど、現地の人のガードをゆるくほどき、その場に笑顔と会話をもたらしたのは子どもがいてこその賜物だった。
これぞ子連れ旅の醍醐味、いろいろ大変、でも最高に面白い。
2012.2

Join the discussion 3 Comments

  • coca より:

    昨年6月、8ヶ月の娘を連れてルアンパバーン、バンコク14日間、(キャンペーン航空券、ストップオーバー利用)の旅行をしていました。ちびおと君の2ヶ月遅れですね。

    懐かしく読ませていただきました。今、娘はちょうど2歳。11月にチェンマイ予定です。前回のようにおとなしくないのだなあと、参考になりました。ちびおと君、ありがとう!

  • coca より:

    昨年6月、8ヶ月の娘を連れてルアンパバーン、バンコク14日間、(キャンペーン航空券、ストップオーバー利用)の旅行をしていました。ちびおと君の2ヶ月遅れですね。

    懐かしく読ませていただきました。今、娘はちょうど2歳。11月にチェンマイ予定です。前回のようにおとなしくないのだなあと、参考になりました。ちびおと君、ありがとう!

  • かな子 より:

    ■cocaさん
    おぉ、子連れ旅の心強い同士が、ここに!
    6月だと結構暑かったでしょうが、どんな旅だったのでしょう。
    同じ場所に行って、違う感じ方をしているのかな、など、いろいろ気になります。
    今度はチェンマイですか。
    先日チェンマイを旅した友人いわく、ステキなカフェが増えているとか。
    娘さんが昼寝した際には、どうぞゆっくりお茶を楽しんでください(笑)。
    そしてご家族皆さんが楽しくチェンマイを満喫できますように。

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