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ブラジルはリオ・デ・ジャネイロにあるファベーラ(スラム街)在住の写真家、伊藤大輔。

彼に初めて会ったのは中南米の旅のとき。
ブラジルを回っていた2007年のことだった。
陽気で、声が大きくて、人懐っこい大輔くんとはすぐに打ち解けて、よくいっしょにビールを飲んだ。
そのとき、リオのファベーラに住みながら写真を撮っているんだ、と話していた。

ファベーラといえば、映画「CITY OF GOD」で観た、ギャングが大勢住んでいて、たびたび銃撃戦が起こる場所という印象が強かったため、「まさかそんなところに住むなんて」、「撮影なんかして大丈夫なの!?」と、とにかく驚いたことを覚えている。
「今度ファベーラに遊びにおいでよ」と軽い感じで誘われたものの、本当に平気なんだろうか、という不安を抱きつつ、でもちょっと覗いてみたいという好奇心には勝てず、半信半疑で訪ねることにした。

ブラジルでいちばん心に残る思い出は、人々のやさしさだ。
街中で地図を広げようものなら、あちこちから「どうした、どこに行きたいんだ?」と声がかかり、親身になって教えてくれる。
とくに用事がなくても、「元気か?」と見知らぬ旅人に挨拶をしてくれる。
とはいえ、強盗の被害にあっている旅仲間もいたので、気を許しすぎないよう注意はしていたが、ブラジル人はどこに行ってもやさしかった。

さて、心配していたファベーラはどうだったかというと……。
やはりここも陽気な人ばかりで、思い描いていたような怖いイメージはほとんど感じなかった。
ただし。
それは彼がいっしょだったから、という大前提があった上でのこと。
(旅行者だけでファベーラを勝手に歩くことは、絶対に控えたほうがいい)
たとえ表面的な部分だけであっても、ファベーラがどんなところか知る機会を作ってくれて、とても感謝している。
しかし、彼の写真にあるような、ふらっとお邪魔したぐらいでは到底目にすることのできない、リアルなファベーラの姿には程遠かったという事実も、一応記しておこう。

最後に朗報を。
現在、東京芸術劇場にて写真展を開催中で、著名な写真家集団、マグナム・フォトといっしょに、伊藤大輔の撮るリオの写真が見られる。
ファベーラでの写真とは雰囲気の異なる、リオならではの美しい情景のショットも並んでいるとか。
また、展示に合わせて、写真集『RIO,FAVELA』私家版を販売したと知り、さっそくネットで購入。

彼の撮るファベーラは、生々しく、緊迫感があって、場の空気そのものが一枚に収められている。
旅を終え、ファベーラに居を構えて10年。
じっくり腰を据えて、深く入り込んでいくからこそ撮れる写真である。
写真展の会場のほか、ネットでも購入OKなので、ぜひチェックしていただきたい。

年を追うごとに注目度が高まり、近年では広告写真の分野でも活躍している伊藤大輔。
この夏にはブラジルオリンピックも開催されるし、ますます彼に熱い視線が注がれるのでは、と思う。
そしてもうひとつ。
明日深夜、TBSの話題沸騰中の番組「クレイジージャーニー」に出演するとか。
こちらもお見逃しなく。

写真家 伊藤大輔
http://saudade-foto.com/

伊藤大輔写真集「RIO,FAVELA」私家版 | doumoripublishing
http://doumori.thebase.in/items/2846817

WIRED:「貧民街」の日常を撮る写真家・伊藤大輔:オリンピック直前、リオデジャネイロのいま
http://wired.jp/2016/03/16/daisuke-ito-interview/

Rio de Janeiro “Various eyes”
リオ・デ・ジャネイロ ヴァリアス・アイズ

世界で最も有名な写真家集団マグナム・フォトと、現在、ファヴェーラ(貧民地区)で暮らす写真家 伊藤大輔が切り取るリオ・デ・ジャネイロ

日程:2016年3月17日(木)~2016年3月28日(月)11:00〜20:00(最終日は18時まで)
会場:東京芸術劇場
https://www.geigeki.jp/performance/event137/

2017年4月17日追記

本格的な写真集を製作するために、クラウドファンディング始めたとのこと。
くわしくは下記サイトにて。

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