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廃材が宝に変わるとき

2009/07/07


ル・コルビュジエのつくった街は、必須。
今回のインド行きを決めたとき、真っ先に目的地として思い浮かんだのが彼のプランに基づいて設計されたチャンディーガルだった。
3月に訪れたアーメダバードにも彼の手がけた建物はいくつかあったが、今度は街全体をデザインしているのだ。モダンな建築物を世界中に残してきた建築界の巨匠が、混沌としたインドでどんなプランを展開していったのか。これはブラジルの首都ブラジリアでオスカー・ニーマイヤーの作品群を追いかけたときのような興奮が、ふたたび味わえるかもしれない。
と、コルビュジエ巡りのことを綴る前に、チャンディーガルに新都を築いたことがきっかけで生まれた名所について触れておこう。
インド人には、むしろこちらのほうが有名かもしれない。というのも、今日ではタージ・マハルに次いで多くの観光客が押し寄せる人気スポットとなっているほどだ。
その正体は、一風変わった成り立ちを持つ公園、ロック・ガーデン。
しかもここの目玉といったら壊れた便座や食器でできた人形たちで、その数なんと数万体にも及ぶらしい。


もったいない精神が根底にあったのか、それとも単なる好奇心か。
どちらにせよ、ネック・チャンドというひとりの男性の大胆な行動がなければ、ロック・ガーデンは存在しなかった。
事のいきさつは、以下の通りだ。
チャンディーガルを建設するにあたってもともとあった村の建物を取り壊し、更地になったと同時に大量の廃材が残った。
それらを見て道路監視官をしていたネック・チャンドはこっそり廃材を持ち帰り、そこいらにゴロゴロ転がっている石も材料として使い、仕事を終えたあとにコツコツと人形づくりに精を出した。
そのうち自宅には収まりきらなくなったために勝手に空いていた公有地で制作を続け、とうとう、というかやっと、と言ったほうがいいのか、15年後に測量チームに発見されてしまう。
不法占拠ゆえ取り壊されても文句は言えない状況だが「これは面白い」と役人に認められ、ついには道路監視官から公園の制作責任者となり、現在でもロック・ガーデンの片隅で昔と変わらずコツコツ制作に励んでいるそうだ。
よく晴れた土曜の午後、サイクルリキシャーに乗ってロック・ガーデンへ向かう。
駐車場には大型バスが何台も停まり、道端には個人でやってきた観光客を待つオートリキシャーやサイクルリキシャーで溢れている。
チケット売場はどこかなときょろきょろしていると、え、そんなに低いところに?
カウンターの位置は子供用かと見間違うほどの高さで、大人は皆一様に腰を窮屈そうにかがめてチケットを買い求めている。

入口を過ぎると、しばらくは石を積み重ねてできた高い塀が両脇にそびえる狭い通路が続く。
遠くに聞こえていた水のせせらぎが近づいてくると視界が開けて、川と滝が現れる。
暑く、乾燥しているだけに、視覚と聴覚に訴えるこの涼しさを演出する仕掛けには大賛成だが、ただ眺めるだけでは飽きたらず服を着たまま水浴びをする人がいたのには驚いた。
水浴びしないまでも滝のすぐ目の前で記念撮影をする人がとても多くて、大人も子供も関係なくいつまでもはしゃいでいる。

そんなほほえましい光景を横目にさらに進むと、水瓶を頭に乗せた女性の人形が何体かお出迎え。
独特の顔立ち、不思議な体のバランスの人形たちが、じっとこちらを見ている。

順路はとてもシンプルだが、標識がなくて次のゾーンへの入口が狭くて、なんだか迷路をさまよっているようだ。ところどころに出てくる謎の廃材作品を前にうーんとうなってみたり、壁のモザイクタイルを間近で見てお皿だ、こっちは排水溝の一部に違いない、などと言い合っているうちに大きな広場に出る。

休憩スペースでひと休みしようと空いているベンチを探していると、ちょうど修復作業をしている職人の姿が。汗をかきかき、モザイクタイルがうまくはまるように調整していた。

休んだあとは、正面前方に見えるブランコを目指す。
ここのブランコはチェーンの長さもすごいが、数がとにかく多い。なのにすべて埋まっていて、待っているらしきグループもちらほら。

大人だから我慢しなきゃ、と頭ではわかっているのだけれど、せっかくだから一度乗ってみたい。
物欲しげな顔で見ていたのを悟られたのか、かわりばんこにブランコに乗っていたファミリーに手招きされて、ほら乗りなさいと着席させられ、背中を押される。
遠慮がちに乗っていたら、ターバンを巻いたお父さんが「こうやって乗るんだよ」と実演してくれる。

その脇では少年がいかに高い位置までいけるか立ち漕ぎで勢いよく乗っているし、年頃の女の子たちは仲良く二人掛けでおしゃべりに夢中。思い思いのブランコを楽しんで降りた途端にさっと別の人がやってきて、また新たににぎやかな歓声が聞こえてくる。

広場を出て往路とは違う道を進むと、あ、これだ!
おかしな顔をして、変てこなポーズをとった人形がずらり列を成している。
体育座りをする人、足が半分埋まっている人、サル、鳥、謎の動物などが大まかなグループに分かれてディスプレイされている。
ちょうど目線の高さほどのところに人形のたたずむスペースが広がっているので、奥のほうの人形の細かい顔の表情まではわからないが、これだけたくさんの数が揃うといやはや圧巻である。
この奇妙で愉快な世界観は、相当クセになりそうだ。
出口近くに「ネック・チャンドと会いたい方は事務局まで」と書かれている看板を前にぜひ会ってみたいとも思ったが、それよりじっくり制作物に取り組んでもらい、また新たな人形といつか出会えることを期待して、ロック・ガーデンの出口をくぐる。

不要品に新たな命を吹き込んだネック・チャンド。
もともとリサイクルありきで始めたわけではないから自由な発想で制作に取り組めたということもあるだろう。しかし、彼の作品を見ていたらリサイクルに求められることが掴めた気がした。
遊び心も持とう。
ロック・ガーデンが世界でも類を見ないユニークなリサイクルプロジェクトとして注目されるのは、このあたりに理由がありそうだ。



大きな地図で見る
2009.6.20 チャンディーガル / Chandigarh

Join the discussion 6 Comments

  • ちゃき より:

    すごいすごいすごい!
    めっちゃ行きたい!!!!
    実は今、タイル張り+粘土にはまりつつあって、タイル屋さんで要らない割れタイルもらっては色々創作中!
    そんな創作心を思いきりくすぐる公園ですね。
    う~ん、このタイミングでこの記事・・・
    やっぱりインドに呼ばれてる気がするー(笑)

  • まこ鮫 より:

    はじめまして。
    今月末にインドへ初訪問予定です。
    事前学習のためにいろいろ検索していたところ見つけちゃいました。このブログ!!!
    さかのぼりながら、読んでいます。
    面白くて気づけばこんな時間!
    かなり、インド旅行が楽しみになってきました。
    ブランコのおじちゃんに、人形のなんともいえない表情。
    体育座りってのがかなりイイ!!なんかイイ!!ですね。
    またお邪魔いたします。

  • かな子 より:

    ■ちゃきさん
    またもや、ナイスタイミング(笑)!
    ちゃきさんのアンテナは、どうもインドとリンクしすぎている気がする……。
    新婚旅行は、インド6カ月の旅で決まりかしらね(笑)。
    ■まこ鮫さん
    はじめまして。
    今月末にインドですか。楽しみですね。
    雨季に入っているので少しは暑さも落ち着いていて、日本のむしむしした夏に似た気候と思えば大丈夫なような気がします。
    体育座り、なんとも味のあるポーズですよね。
    ほかにもいいのがたくさんあったのですが、西日が強すぎてうまく写真に収められませんでした。
    なので、ぜひ直接訪れて確かめてみてくださいね。

  • pointweather より:

    タイルチルドレン強烈!
    ネック・チャンドさんの公園、汐留のアールブリュット展で紹介されていて、これは一大事と感じていたのですが、実際に訪問されているとは。
    チャンディーガルのお話も楽しみにしています!

  • kay より:

    はじめまして。
    インドに行かれてからずっとみていますが
    もう、5ヶ月もいかれているんですね。
    写真をみていて、「どこにいっても同じ景色がなく面白いなあ・・・」と思っていました。
    なかでもこの場所は別格ですね!笑
    ブランコを楽しそうに漕いでいる大人って初めてみたかもしれないです。
    サバイバルでエコでアートなインド、いつか体験してみたいです。

  • スミサト より:

    ■pointweatherさん
    汐留で紹介、熱いですね。
    wikiでは宮間英次郎さんの項目で紹介されています。
    とにもかくにも熱いということで。
    ■kayさん
    はじめまして、ご覧いただきありがとうございます。
    インドはまるで複数の国を旅しているように、言語も人種も変わってとても面白いです。
    ここはホントに風変わりな所ですが、それもまたインドらしくて良かったです。