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Oscar Niemeyer
1907 – 2012

1907年、ひとりの偉大なる建築家がリオ・デ・ジャネイロの街に誕生した。
ブラジル建築界の巨匠、オスカー・ニーマイヤー（Oscar Niemeyer）。
彼のデザインの根底にあるもの、それは、周囲にあふれる自然の中に存在する曲線だ。
100年ものあいだ斬新なアイデアを形にし続け、青空によく映える大胆で美しいラインを描く建築物が、今も人々を魅了してやまない。
ブラジルのさまざまな都市で出会った、彼の素晴らしき建築をここに紹介しよう。

｢50年の進歩を5年で｣というスローガンを掲げて誕生した首都ブラジリア。
1956年からスタートした、何もない土地での機能的かつ効率的な都市計画は、
素晴らしい代表作が数多く生まれるきっかけとなった。
1泊2日という限られた時間で朝から晩まで街中を動き回って、クタクタになったけれど、
建物の前に立った途端、興奮して疲れが一気に吹っ飛んだことを思い出す。

「美しい地平線」という意味を持つブラジル南東部の都市、ベロ・オリゾンチ。
この街にあるパンプーリャ湖畔の開発に携わったことで、彼の卓越した才能が広く知れ渡るようになった。
ニーマイヤーならではの美しい曲線を、静かな環境でゆっくり楽しめたのは、
本当にぜいたくなひとときだった。

お金を極力かけずに、もともとあるものを活かす。
車優先ではない「人」を大切にした街づくりが功を奏し、世界から注目を集めることになった環境共生型都市、クリチバ。
ワクワクする発見が街のあちこちにたくさんあったが、バスの窓からこの巨大な目玉が見えたときには、思わず息を呑んだ。
ニーマイヤーを巡る旅は、この街から始まった。

南米最大の商業都市、サンパウロにはさまざまな国からの移民が暮らしている。
はるばる海を渡った日本人も多く、世界最大の日系移民コミュニティーを有する街でもある。
ニーマイヤーの代表的作品「イビラプエラ講堂」の中にある、外観のインパクトに負けないぐらい大胆なオブジェ。
これは、20代でブラジルに移住し、子育て後に創作活動に没頭した芸術家、大竹富江の作品だ。
100歳を超えても生涯現役で、曲線美を追求し続けたというふたりの生き様が、重なって見える気がする。

海と山に囲まれたブラジル屈指の大都市、リオデジャネイロ。
偉大なる建築家を生んだ街の最大の魅力は、周囲の豊かな自然と陽気なカリオカ（リオっ子）の弾けるような笑顔。
郊外にあるかつての別荘「Casa das Canoas」を訪れたくて、インフォメーションで行き方を聞いたところ……。
なぜか当時の自邸のアドレスを調べて教えてくれた。
肝心の別荘は地形をそのまま活かして設計された、それはそれは素晴らしい建物だった（撮影OKだが、写真をWEB等に掲載するのは不可というのが残念な限り）。

崖に咲いた大輪の花か、はたまた不時着したUFOか。
一度見たら忘れられないニテロイ現代美術館のユニークなデザインは、
たった数分、紙ナプキンにスケッチしてマスタープランが完成したというから驚きだ。
360度のパノラマビューが楽しめる展示室の窓の先には、リオデジャネイロの街が。
建築とアートと素晴らしい眺望を同時に満喫できる、最高のスポットである。

ブラジル北東部にあるサン・ルイス。
世界遺産に登録された歴史地区の、タイル貼りのポルトガル風建築が有名だ。
でも、ちょっと足を延ばせば、ここでもニーマイヤー作品に出会える。
鳥が今まさに羽ばたこうとしている姿のような屋根の下は、ひんやりしていて絶好の休憩ポイント。
日中とても暑いこの街の、オアシスのような場所だった。