人生の中間点に差し掛かって、「これまで通りにはいかないなあ」と感じる機会が増えた。
まずは体力の衰え。これは年齢を重ねれば起こりうるものだから、まあ仕方がない。
あとは自分を取り巻く環境。子どものことや親のこと、仕事にまつわることなど、状況がめまぐるしく変化して、追いかけるのに精一杯。
それでも、なるべく日々すこやかに、そしてほがらかに過ごしたいよねということで、最近は自宅でゆるーくトレーニングしたり、時間が取れたら山に登ったりしている。
そんな折、「AROUND INDIA」主宰の田村ゆみさんから「アーユルヴェーダの本を出版しました!」とのお知らせをいただいた。
15年に渡ってアーユルヴェーダの本場ケララを始め、インド各地を旅して探求を続けるゆみさんは、いつ会ってもにこにこ、話せばけらけらとよく笑う楽しい人だ。
だから、新刊『こころとからだが目覚め出す ケララ秘伝 暮らしのアーユルヴェーダ』のまえがきを読んだときに、とても驚いた。
ご自身の体調不良(しかもかなりハードなもの)がきっかけとなり、アーユルヴェーダの道を志すようになったストーリーが、ドラマチックに展開していく。
「そんなに切羽詰まっているわけではないけれど……」と思いながら本編のページをめくる。
今度は一変、穏やかな語り口調でアーユルヴェーダとは何か、どんなことに気をつけるといいのか、といった有益な情報を教えてくれる。
ときおり登場するゆみさんのインド滞在中のエピソードも面白くて、「へぇ」「わかるー」「なるほど!」と心の中で(ときには口に出して)感心しながら、楽しく読み進めていった。
とくに参考にしたいと思ったのは、春、梅雨、夏、秋、冬の、各季節の過ごし方。
気象病というワードをたびたび目にするようになったが、「病気じゃなさそうだけどなんだか調子が悪い」というときによさそうなヒントが満載である。
また、その時期におすすめのアーユルヴェーダに基づいた食材や献立については、日本で手に入りやすいものをチョイスしてくれている。ありがたい。
そして、かつてマッサージサロンを運営していたゆみさんの本領発揮! なのが、セルフケア用のオイルやパックのレシピ。
手順を眺めているだけでもよくわかるが、一部はQRコードを読み取ると、ゆみさん自らが出演する解説動画を視聴できる。
至れり尽くせり、とはまさにこのことよ。
とくに惹かれたのが、蒸留器なしでも作れるローズウォーター。
大人の自由研究みたいで楽しそうだから、これはいつかぜひ試してみたい。
この本をより面白くしているのが、インド文化研究科の伊藤武さんによるコラム。
ゆみさんの疑問に答える形式になっているのだが、個人的にとても興味深かったのが、「ケララでは牛肉を食べるヒンドゥー教徒もいるのはなぜ?」という問いへの回答。
古典を熟知し、インドを放浪した伊藤さんだからこそ知り得た内容を、惜しみなく伝えてくれる。
そう、本書のイラストを手掛けたのも伊藤さんとのこと。
インドの国旗カラーが目を引く表紙に描かれた、いきいきとしたインドの人たちが本当に素晴らしい。
時間をかけて丁寧に制作された本は、やはり読んでいて楽しい。
アーユルヴェーダに興味のある人はもちろん、料理や美容を生業にしている方や、日々の不調に困っている方にも、ぜひ手に取って欲しい一冊です。