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アルコール禁止。肉食禁止。卵も食べてはいけないらしい。
ヒンズー教の聖地プシュカルは、これだけ聞くとどんなに厳格な街なのだろう、と思ってしまう。
が、メインストリートには外国人ツーリスト向けの洋服屋やレストランがびっしりと並び、チャイやフレッシュジュースをすすりながら楽しそうにおしゃべりに興じる外国人の姿を、あちこちで目にすることができる。
まるでこの一帯は、タイはバンコクのカオサンロードか、はたまたグアテマラのパナハッチェルか。
こと食にまつわる制約の多いこの街が、これほどツーリストに人気なのはどうしてなのだろう。


ブーンディーからバスに揺られて約5時間。
バスターミナルに降り立った瞬間から、客引きがうちの宿においでと必死にアピールしながら群がってくる。
いちばん暑い時間帯に熱心に仕事をする彼らには申し訳ないが、彼らを振り切ってすでに目をつけていた宿まで一直線に歩いて向かう。
清潔で、すみずみまで掃除が行き届いた気持ちのよい宿にチェックイン。
のんびり昼寝でもしたい衝動を抑えて、にぎやかな通りへ出かける。
色も柄も大層にぎやかなプリントコットンでつくられたシャツやスカート、細かい刺繍やミラーがはめ込まれたバッグ、アクセサリーにお香など、お土産天国ストリートが延々続く。

すれ違う外国人ツーリストも、ドレッドヘアにモヒカンにタトゥーと、お土産に負けないぐらいバラエティ豊かな顔ぶれだ。
それほど大きくない街なのに、外国人の人口密度はかなり高そう。
ということは、きっとここに住むインド人は外国人慣れしているのだろう。
でも、ただ単にあいさつをしてくるだけの若者たちや、買い物をしていてもこちらの言い値ですんなり販売してくれる商店主など、ここには思ったより手強いインド人の姿はない。
むしろ、フレンドリーで親切な人たちに出会うきっかけがいくつかあったのが印象的だった。
夕日を眺めながらお茶でもしようと、見晴らしのよい目当てのカフェを探して歩いていたときのこと。
どうやら道を間違えて歩いていたらしく、いくら歩けどもカフェはおろか民家すら見当たらなくなってきた。
そんなとき、向こうから歩いてきたインド人に「どこへ行くんだ?」と話しかけられ、正しい道順と翌日にこの街で祭りがあるらしいことを教えてくれた。
別れ際に日本語で「達者でな」と言われたのが妙におかしくて、歩き疲れてくたくただったのに思わず笑ってしまった。
結局、夕日が顔を覗かせているあいだにカフェにたどり着くことはなく、仕方なしに宿へ戻ろうとしていたとき、薄暗い中で道脇に花畑が広がっているのが見えた。
さらに、何かが花畑の中をごそごそと動いている。
それはお供え用のバラを摘んでいる人で、しばらく眺めていたらこちらに近づいてきて、摘んだばかりのバラの花を「ギフト」と言ってくれた。
淡い香りを放つバラの小さな花束は、夕日が見られずちょっといじけ気味になっていた我々を元気にしてくれた。

ほかにも小さな親切をたくさん受けて、のんびり買い物や街歩きを楽しめた。
ほどよく地元の人とふれあえて、ほどよくなんでも揃う、居心地のいい街。
これがプシュカル最大の魅力かもしれない。
さて翌日、祭りがあると言われていたので朝の早い時間から街へ繰り出す。
にぎやかな演奏が聞こえてきたので音のするほうへ向かってみると、お神輿と楽団がお寺の前で演奏中。
その脇から、華やかな衣装に身を包んだ馬がやってきて、軽快なステップを踏みながらくるくるその辺を回っていた。
(軽快に見えるだけで、当の馬たちはハアハア息を切らせながら一生懸命やっていたのだけど)

あまり大きな祭りではなかったので必見! という感じはしなかったけれど、ここに1泊だけなんてもったいないという暗示だったのかなと思うことにした。


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2009.3.18 プシュカル / Pushkar

Join the discussion 3 Comments

  • daichirou より:

    意外でしたか。
    いつも更新を楽しみに待ってますよ。
    ギフトのお兄さん(おじさん?)、
    グッときたよ。
    なんかみんな人が豊かだね。

  • freefish より:

    とうとうはじまりましたね。
    インドは何回行っても飽きさせない魅力なのか魔力がありますね。
    なんだか、ブログを見ててすぐに飛んでいきたくなりました!!
    僭越ながら、このサイトの紹介MIXIでさせてもらいますね~~~

  • スミサト より:

    ■daichirouくん
    まさかインド人からモノを貰えるなんて思わなかったから、本当にビックリしたし、花を貰うっていうことが凄く心に残るものだという事を実感したよ。
    男性が貰っても嬉しいものなんだね。
    ■freefishくん
    日記で紹介ありがとう!
    インドね、嫌な面も沢山あるけど、笑えることも、素晴らしいことも沢山ある国なんだなーって改めて感じているよ。
    ブログの更新が追いつけないぐらい、色んなことが起こるよ。(笑)

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