仕事として関わっていた「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(ECフィルム)のプロジェクトが、いよいよ動き出した。
ECフィルムは世界中の知の記録の集積をめざした、映像による百科事典。
主に1950年代以降の、世界各地の暮らしの技法や儀礼など、貴重な3000タイトル強という驚くべき映像アーカイブだ。
より古いものだと、1920年のバリ島のケチャというのもある。
とにもかくにも、下記の動画を見ていただきたい。
ECフィルムは、現代の暮らしからはすでに失われてしまったものが記録されているケースも多い。
仕事をしながら、「昔は当たり前に見かけたのに……」と、なくなってからその貴重さに気づいた経験を思い出した。
以前にも紹介したが、インド最南端のカニャークマリを訪れた時のこと。
2009年の再訪時には、漁港付近に停泊していた船がどこにでもありそうな、スタンダードな形をしていたのだが……。
2000年に同じ場所で撮影したときには、いかにも手作りといった荒々しい造作の船で、だからこそ「おっ!」と魅力的に思えたのだった。
昔の古き良き光景や習慣が、いつまでも同じように在り続けるということはない。
すでに失われてしまった往年の素晴らしい文化については、ECフィルムのように保存されている映像を大切に受け継ぎつつ、時代と共に移り変わるものは柔軟に受け止められたらいいなあ、と感じている。
さて、リニューアルしたECフィルムのサイトでは、全3000タイトル以上の映像を検索することが可能になった。
そして、デジタル化されている約500タイトルは貸出もOK。
「こんなに面白い映像があるんだ!!」と興味を持つ人が増えることを、切に願う。
どんなに現代が便利になったとしても、実際に過去に戻って旅することはできないのだから。
エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ
http://ecfilm.net/