コロナ禍で3月から仕事のキャンセルが相次ぎ、4月になるとほぼ全滅となってぽっかり時間が空いた。
社会の状況が好転する兆しがまったく感じられず、先の見えない毎日をただ鬱々と過ごすのもなんだかなあと思い、今年は家庭菜園スペースを例年よりも広くとり、野菜の種や苗を少しでも多く植えて収穫に精を出すことにした。
不思議なことに、庭いじりをすると心が穏やかになる。
やっていることは至って地味だ。雑草をむしったり、脇芽をかいたり。汗だくになるし、蚊にも刺される。
でも、日に日に生長する植物の姿は見守る喜びを与えてくれた。
花が咲くと、蜂や蝶が蜜を吸いにやってくる。
植物と小さな生き物たちがわんさか集まる、極狭の庭で繰り広げられる世界は、ただぼーっと眺めているだけで妙に充足感に浸れた。
目下の関心事が庭になってから、もっと面白い植物を!と思って門扉のすぐ近くにマホニアコンフューサ(ヒイラギナンテン)を植えた。
以前から和風の住宅に合わせてもしっくりきて、それでいてどこか亜熱帯の感じが漂うこの植物が欲しいなあと思っていたのだ。
この後、異国感のあるものを増やしたい欲がむくむく湧いてきて、気がつけばあちこちの園芸店を巡り、メルカリやヤフオクも駆使して、個性的な植物をどんどん手に入れた。
もともと裏庭に生えていたシダを玄関そばの目につくところに移植し、近所のコンビニでたまたま売っていたベゴニア、ムラサキオモトを買ってきて、とにかく植えまくる日々。
気分の赴くままに作り上げていくスタイルの庭なので、素人感が漂っているのは否めないが、「次はどうしよう」と手と頭を動かして試行錯誤をするのはとても楽しい。頭の中は植物のことでいっぱいで、コロナの状況を憂慮している場合ではなくなった。
6月の植え始めの頃には植物もまだ小さくて庭の余白が目立っていたが、猛暑続きの8月に入ってからはぐんぐん成長し、今や背丈を超えるほどの大きさになったものもある。
ちょっと育ちすぎて全体のバランスが崩れてきた感もあるが、玄関のドアを開けて、最初に目に飛び込んでくるのがこの光景というのは非常に気持ちがいい。
先日、南大東島産のさとうきびを使って製造されているラム「CORCOR」をいただいた。
今はロックでちびちびやっているけれど、庭に茂っているミントをたっぷり入れてモヒートにしようかなとか、そういえばハバナのバーでぼったくられたときに出されたモヒートは今まで飲んだ中でいちばんおいしかったなとか、思考が勝手に海外に飛び出していく。
自宅にいながら、日本で手に入るもので仮の旅時間を楽しむ。
しばらくはそんな過ごし方もいいなあと思っている。