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当初の本命の渡航先、ベトナムはハノイに到着。
おいしいものをいっぱい食べるぞとか、ショッピングに精を出すぞとか、密かな、そしてささやかな野望を抱いてやってきたけれど、さて、子連れでどこまで実現できるだろう。
……と思いを巡らすよりも、まず上着を羽織らなきゃ。
寒いよ、ハノイ!


バンコクはさすがに暑かったから、ほっとしたと言えばそう言えなくもない。
でも冬から真夏、そして初冬に逆戻りという気温差はさすがに子どもには厳しかろう、と思って見てみれば、チビオト、寒いほうがよっぽどいきいきしている。
さすが、子どもは風の子、である。
ちなみにたまたま到着した直後が寒かっただけで、その後、晴れ間がのぞくようになると散策するのにちょうどいい気候だった。
ホテルを目指して、夜のハノイをタクシーは突っ走る。
周囲は真っ暗でいまいち街の様子がつかめず、心もとないままホテルに到着。
翌朝、何の気なしにバルコニーに出てみたら、天秤棒を担いで歩く人やいかにも過積載のバイクなどの見慣れない光景に、じわじわと新しい街に来たことを感じる。
旅先での、好きな瞬間のひとつだ。

ハノイでは前半2泊、間にラオス滞在を挟み、後半にまた2泊というスケジュール。
ただ、夜到着とか早朝出発とか、あまり滞在時間が長くないのが残念無念。
足を伸ばして、奇岩がそびえるハロン湾へ日帰りクルーズ、というプランも考えたが、余裕のない旅程は子連れ旅ではご法度と思い直し、ハノイのみを満喫することに。
それにしても、まあバイクの多いこと。
噂には聞いていたけれど、縦横無尽に走るバイクをすり抜けて横断するのに毎度ヒヤヒヤする。
これではチビオトを歩かせるなんてもってのほかなので、広い遊歩道のあるホアンキエム湖以外の場所では抱っこで散策する。
日本人が階上に行く際にエスカレーターやエレベーターを頼るように、ベトナム人は近場でもバイクにまたがずにはいられないのか、歩いているのは外国人ばかりだった。



さあ、お楽しみのごはんの時間。
あまり食に関心を示さないチビオト、果たしてベトナムの食事は口に合うだろうか。
タイでは暑さも手伝って普段以上に食が細くなり、さすがに心配になってハノイ到着後すぐにトラベルクッカーでごはんを炊き、ふりかけをかけて食べさせた、という経緯がある。
少しでも現地の味を楽しんでくれたら……、と好物の麺や揚げ物系の料理をチョイスすると、食べる食べる。
フォーと揚げ春巻きがとくに気に入った様子。

タイミング悪く食事時に昼寝に入った場合は、眠ったチビオトを抱えて嬉々として屋台へ向かう。
今回、大いにハマったのはブンチャーというハノイ名物の麺料理。
炭火の焼肉と肉団子が入った甘じょっぱいタレに、パクチーやミントなどの香草を入れて食べる米のつけ麺は、今までに食べたことのない衝撃のおいしさだった。
異国のうまいものとの出会いって、その国の好感度に大いに影響する要因のひとつだよなあ、と思いながら、箸を口へ器へ忙しく動かして黙々と食べる。
学生時代、旅に出始めの頃は食費は節約するもの、空腹を満たせればいいぐらいのスタンスだったのに、今では食こそ一期一会を心して逃さぬべし、とすっかり逆転してしまった。
日越交流も印象的だった。
1歳のチビオトはやんちゃ盛りなので、自分が食べ終えたら、親がまだ食事中だろうがなんだろうが、とっとと動きたくて仕方がない。
なだめながらおとなしくさせようと苦労していると、ホテルの従業員がさっとチビオトを抱きかかえて、フロントで遊んで面倒を見てくれる。

市場で果物を買ったら、ぶっきらぼうに見えたおばちゃんが、子どもに、という素振りでみかんをおまけしてくれる。大げさなほどにかわいがる、という感じではなく、すれ違いざまにニコッとするような、とても自然な触れ合い。
思うにベトナム人の子どもとの接し方って、小さな子をあやすというより、さりげなく見守るという距離感を大切にしているのかもしれない。
それがとても心地よかったことを思い出す。
2012.2

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