おととしは台湾。
昨年はタイ・ベトナム・ラオス。
さて今年はどこへ行こうかと計画を練り始めたものの、実は、なかなか渡航先を決めることができなかった。
大人が行きたいところは世界各国にたくさん散らばっているが、子どももいっしょに楽しめるところ、となると……。
両方を満たす着地点はどこだ?と、一時は地図を眺めてああでもないこうでもないと言い続け、完全に迷路に迷い込んだ状態が続いたが、やっとのことで納得のプランができあがったのが出発2カ月前。
ボルネオをメインに、マレーシア本島とちょっとだけタイにも足を伸ばすという、自然と動物、そして都会ならではの楽しみをたっぷり盛り込んだ欲張りルート、はたしてどんな旅路だったのか。
初めてLCCのエア・アジアを利用しての、前回同様の深夜発。
格安だけに座席が狭いのではと心配していたが、羽田 – クアラルンプール間のフライトではほとんど気にならず。
(その後何度か国内線を利用した際は、窮屈な感じが否めなかった)
すでに2歳を迎えているので今回はチビオトの席もあるものの、ひとりでおとなしく座っていたのはほんの少しの間だけで、いつもとは違う環境に興奮している様子。
離陸後30分でようやく眠りについたチビオトとは対照的に、大人はいつまで経っても寝つけず、そのまま早朝のクアラルンプールに到着。
4時間のトランジットの後、ふたたび飛行機に乗ってやっとのことでボルネオの玄関口、コタキナバルにやってきた。
真面目な顔でパスポートにポンとスタンプを押していた入国審査官、「トゥリマカシー(ありがとう)」とチビオトが言うと、ブフッと吹き出して「サマサマ(どういたしまして)」と裏声になりながら応えてくれた。こういう瞬間が、子連れ旅の愉快な瞬間だ。
まだ雨季が明けていないはずだが、今年は雨が降る日が少ないとかで蒸し暑い。
真冬の日本を飛び出して一気に南国にワープしてきたチビオト、顔を真っ赤にして汗だくになっているから、急激な気温の変化に体がついていけないのでは、と心配していたが、走ったりジャンプしたり、用事がないのに何度も階段を登り降りしたり、なんだか楽しそうに過ごしている。
しばらくはのんびりペースで過ごすことにしたので、時間を気にすることなく、心ゆくまで遊ばせておけるゆとりを持ったのは正解だった。
ボルネオ最初のお楽しみは、コタキナバルから車で45分ほどに位置するムンカボン川クルーズ。
マングローブ林を間近で観察したり、水上集落にお邪魔して暮らしを垣間見たり。
夜には頭上に星空、目の前にホタル、眼下には夜光虫という、闇と光のコントラストを船上から眺めて夢心地になり、一気に旅気分が盛り上がる。
そしてこの旅のハイライト、キナバタンガン川2泊3日のリバークルーズへ向かう。
まずは孤児となったオランウータンを保護・飼育、ゆくゆくは森へかえす手助けをしている施設、セピロック・オランウータン・リハビリセンターへ。
しかし着いた直後から雨が降り出し、野外のプラットフォームで行われる10時のフィーディングを前にザーザー降りになってしまったため、オランウータンの姿をちらっと目にしただけでチビオト退散。
そういやガイドが何度も「確実に見られるわけではない」と言っていたっけ。
今度はボートに乗って、キナバタンガン川下流にあるアバイ村を目指す。
2時間もの船旅、途中休憩はないし揺れるだろうし、とハラハラしながらのスタートだったが、乗船後まもなく昼寝を始め、目的地に着くまでグーグーだったのでホッとする。
いくら行程上にお楽しみを散りばめても、移動時に多少の我慢がつきものだというのはどうしようもない。
移動時間をどうやって乗りきるかで、子どもも大人もだいぶ負担が変わってくるように思う。
宿泊したアバイ・ジャングル・ロッジは、施設としてあれこれ整ってはいるが、洗練されすぎていないのんびりした雰囲気が心地よく、裸足で歩き回れる広々としたスペースがあるのがうれしい。
目が覚めて靴を脱いで早々、嬉々として廊下を駆け回り、スタッフやほかのゲストが遠巻きにニコニコしながらその様子を見ていた。
移動は難なく乗り切ったが、肝心のリバークルーズはどうだろう。
2~3時間ボートに乗って、動物を見つけたら静かにして観察することになるのだが、一箇所にじっとしていることができないチビオトが楽しめるだろうか。同乗者にも迷惑をかけることにならなければいいが……。
テングザルの集団やボルネオゾウの親子がバキバキと草を食んでいる姿など、貴重な場面にいくつも遭遇できて大人は大興奮だったが、さて、チビオトは。
思ったほど出会った動物に食いつきはしなかったが、騒ぐこともなく、船旅に飽きると持参した双眼鏡やおもちゃで遊び、彼なりに面白がっていたようなので結果オーライだろう。
これまでいっしょに過ごしてきて思うのは、喜んでもらおうと初めての場所や目新しいものを見せても、その場での反応は案外薄い、ということ。
咀嚼するのに時間がかかるのかもしれない。
翌日にはアバイ村で植樹をし、村の子どもといっしょに木登りをし(登りたそうだったので木に乗せてあげたのだが)、またまたボートで移動をしてスカウ村へ向かい、こちらでもリバークルーズを楽しみ、土砂降りの雨に降られて全身びしょ濡れになり、と、濃密すぎる一日が待っていた。
ボルネオでの日々は、充実していたためか1週間もいたということを忘れてしまうぐらい、あっという間に過ぎてしまった。
それでもボルネオのほんの一部しか見られていないのだから、とにかく見どころが盛りだくさんの地域なのだと痛感した。
チビオトが大きくなって、自分の足でトレッキングができるようになったら再訪したいと思うが、その頃には我々の足腰に不安を感じるようになっていないだろうか。
いやいや、旅人たるもの、年をとっても世界各地を積極的に訪れる気持ちを忘れないようにしなければ。
ボルネオを離れ、クアラルンプールやマラッカ、そしてタイのクラビまで足を伸ばした大充実の15日間だった、のだが、帰国目前に大人ふたりが揃って体調を崩したというトホホな話も一応記録として残しておくことにしよう。
2013.2.11-26