親しくさせていただいているイラストエッセイスト、松鳥むうさんの新作が発売された。
前にチラッと「新刊を執筆中」だと聞いていたが、今回は日本のゲストハウスについてのコミックエッセイだ。
これまで泊まったゲストハウスの数は100軒以上、というむうさん。
本書では56軒が紹介されていて、そのうちの6軒は宿の特徴やオーナーの人柄、お客さんとのふれあいなど、むうさんが宿泊した際のエピソードがたっぷり描かれている。
個性派揃いで、どこもとても楽しそうだ。ああ、すべてに泊まってみたい。
読み終わってから、ある共通点に気づいた。
掲載されている宿がどこも、もとからその土地にあった建物を活用して開業したこと、だ(恐らく)。
ゲストハウスブームの昨今は、新築で部屋数も多く、ホテルのような設備を誇るところも出てきているが、古い建築物を活かしてリノベーションした宿のほうが、断然面白い。
もともとの佇まいを活かしつつ、好きで集めたアンティークグッズをたくさん並べたり、もらいものや拾った流木でデコレーションしたり。
限られた空間をいかに快適にするかという、オーナーの創意工夫が感じられるから、そう思うのかもしれない。
そしてまた、各宿のオーナー自身も魅力的だ。
世界を旅していた人、農作業をしながら宿をやっている人、子育て中のファミリー、海が好きでお客さんがいてもサーフィンに出かけてしまう人……。
ゲストハウスを始めようと思ったきっかけも、その土地で開業した経緯も、皆バラバラ。
でも、あたたかくゲストを迎え入れて、楽しく過ごせるように気を配ってくれるのは、全員同じ。
そんな宿やオーナーの雰囲気を、むうさんがイラストと文章で見事に表現していて、さすがだなあ、と感心する。
コミュニケーション力に長けているから、毎回すんなり溶け込んで、いろいろな話を聞き出せるんだろうなあ、と思っていたら。
あとがきに意外なことが書いてあった。
なんと、ゲストハウス通の彼女でも、未だに泊まるときには緊張するのだそう。
詳しい内容は、本書に譲るとして……。
ゲストハウスに興味はあるけれど、「システムがよくわからない」「ほかのお客さんとうまくやれるか心配」と宿泊に二の足を踏んでいる方に、とくに読んで欲しいと思う。
ゲストハウスをこよなく愛するむうさんが選んだ宿だから、居心地の良さは折り紙つき。
さらに泊まるときのコツや、持っていくと便利なアイテムの紹介もあって、読めば読むほど、不安より興味や期待のほうが上回るだろう。
すでにゲストハウスに泊まり歩いている人には、「あの宿がこんな風に紹介されている!」という楽しみ方もできる。
情報満載で読み応えがあるのに、1冊1,080円とプチプライス。
これはぜひ手元に置いておきたい一冊だ。
ダイヤモンド・ビッグ社
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