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バイクの数が桁違い。
それが、サイゴン(ホーチミン・シティ)の第一印象だった。

電車に揺られて数時間、もうそろそろ到着だなと思いつつ、ふと車窓に目をやると、道路の端から端までびっしりとバイクで埋め尽くされていた。
ちょうど夕方の帰宅ラッシュの時間帯だったのだろう。
踏切前に隙間なく並ぶバイクの列は、世界的マラソン大会のスタート前の光景と重なった。

サイゴン駅に到着してタクシーに乗り込む。
渋滞で車がまったく動かなくなっても、バイクはクラクションを賑やかに鳴らしながら、タクシーの車体すれすれを通って颯爽と追い抜いていく。
すきあらば侵入してくるし、ときには歩道すれすれを逆走しているのもあって、バイクウォッチングに夢中になっていたら、あっという間にホテルのそばまでやってきた。
ベトナム人の高度な運転技術、恐るべし。そして、面白い。

ホイアンから海沿いの街を経てやってきたベトナム最大の商業都市は、とにかく暑い。
最高気温が35度を超える日が多かったので、プール付きのホテルを押さえたのは大正解だった。
外国人ツーリスト向けのショップやバーがたくさんのファングーラオ通りとブイビエン通りのあいだに挟まれた、路地裏にある宿周辺は、寺院の鐘の音が聞こえたり、地元の人を相手にした行商が行き交ったり、そこだけ都会に染まらずに、昔から変わらない生活を営んでいるみたいだった。

街に出れば洗練されたカフェがあちこちにあるし、サイゴンスカイデッキのような高層ビルもある。
それでいて、そのふもとには低すぎるプラスチックの椅子に腰掛けてお茶をすするベトナム人の姿もある。
新旧が混沌と混ざり合ったサイゴンの街は、チビオトにとっても楽しかったようで、「サイゴン、もっといたかったね」と言わしめるほどの刺激に満ちていた。

もっとも、プール大好きな彼は、水遊びが楽しめる上に好物のスパゲッティ・ボロネーゼのおいしいお店が多かった街だから、という理由だったのかもしれないが。

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