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何度も訪れている青森だけれど、まだ行ったことがない場所というのも意外とある。
いずれ行く機会もあるだろうなんて悠長に構えていると、いつまで経っても重い腰が上がらず結局行かずじまいになってしまう。
朝ご飯を食べた後、今日は何をしようかと考えていてふとひらめいたのが、津軽鉄道のストーブ列車。
冬の時期しか走っていないのだから、なおさら今乗っておかねば。
吹雪の中、ストーブ列車に乗るべくバスで五所川原を目指す。


五所川原への道中は雪、雪、雪の世界。
いくらタイヤが冬仕様とはいえ、難なく走っているのが奇跡に思えて仕方がない。
1時間ほどで五所川原に着き、さっそく切符売り場へ。
終点までは行かず、太宰治の生家がある金木まで行くことにしていたのでそこまでの切符と、ストーブ列車乗車用の切符(300円)を購入。
しっかりした厚紙の切符を手にすると、小さい頃は普通に使っていたことをおぼろげながら思い出す。

津軽鉄道は五所川原と中泊町を結ぶ日本最北の私鉄で、冬期のみ1日に2往復、ぽってりした形が愛らしいダルマストーブを搭載した車両が連結されていて、その車内にはストーブ2台と傍らには石炭の入ったバケツが置かれている。
すでにスルメを焼いている人がいるためか、早くも香ばしい匂いが立ち込めている。
アルミホイルに包んださつまいも持参という準備万端の家族もいて、走行前から思い思いにストーブ列車を楽しんでいる模様。
ちょうどストーブの目の前に空席を見つけたのでそこに陣取る。
アテンダントと呼ばれるガイド役や車内販売の人が記念写真の撮影をしてくれたりスルメを焼くお手伝いをしてくれたり、もう至れり尽くせり。
限定販売という宣伝文句につられて買ったどら焼きをいただきながら、車内の雰囲気や外の景色を楽しむ。
走り出すと、アテンダントが「ここら辺は積雪がすごくて……、」といった話をしてくれるので、退屈することなく、かといってほどよく放っておいてくれるのでとても心地よい。
車内全体を包むゆるい空気感もたまらない。


金木で途中下車し、太宰治が幼少時代を過ごしていた生家で現在は記念館として一般に公開されている斜陽館へ足をのばす。
今見ても大層立派なお屋敷だが、和風と洋風がミックスされたつくりは当時としてはとてもハイカラだっただろう。
家の中はかなり広く、大きな蔵もあってその豪壮な邸宅にはとにかく驚かされるが、それ以上に度肝を抜かれたのがとてつもなく豪華な仏壇だった。

ストーブ列車の時間に合わせて駅に戻る。


帰りの電車で知ったのだが、3両のうち地元の人が利用するディーゼル車が1両と、主に観光客が乗るストーブ列車が2両という構成で、さらにひとつはツアー客専用、もうひとつが一般観光客、というように分けられている。
行きは写真を撮っているうちにあっという間に到着してしまったので、今度はスルメとビールを買ってのんびり楽しむことにした。
火力が弱まってきたのを見つけた車内販売の係が追加で石炭をくべると一気に熱くなる。
ダルマストーブの威力はすごい。
もっとゆっくり過ごしたかったのにたった30分の乗車時間はあっけなく過ぎていき、ふたたび五所川原に戻ってきた。
慌ててビールを流し込んで外へ出ると、ストーブでほてった体がぶるっと震えた。
移動手段としてだけでなく、乗車中の時間を楽しむために乗る列車がこんなに面白いなんて。
さらにこれまで見過ごしていた青森の魅力を見つけたような気がして、短い時間ながらも充実したひとときを過ごせた。



2010.1.22 青森

Join the discussion 5 Comments

  • kia より:

    やばい、なんというノスタルジー・・・!

  • ふうち より:

    雪っていうのは、なんか、すごい質量でもって圧倒させるものだねぇ。
    ストーブ列車はわたしも一度乗ってみたいなとおもってました。記事を読んでたらそれが叶ったみたいでたのしかったです・・・ありがとう!

  • スミサト より:

    ■kiaさん
    観光向けとなる前だと、もっと感じるものあったんだろうな、とか思うと少しくやしいけど凄く良かったよ。
    五所川原のバスターミナルが前はとんでもなく凄く良かったんだけど、新しくなっちゃってて残念な感じだった。
    日本全国の良い所も早く行かないとね、特に田舎。
    ■ふうちさん
    雪って、凄くミニマルな風景になるのが最高です。
    外だと寒すぎて手が痛くなってしまうので、あまり沢山は写真撮れないのがもどかしいです。
    ストーブ列車はオススメです、ほんわかします。
    家族で行くのも良さそうです。

  • まつき より:

    以前のかなこなら、確実に『ストーブ酒』と『スルメ』だったね^m^
    津軽凧を見ると、妙に故郷が懐かしくなるね。
    列車にしても切符にしても、古いものは残していかなきゃって思う。
    古き良き時代があっての今だからね。

  • かな子 より:

    ■まつき
    そうね、ビールでもよかったんだけど(笑)。
    あのぶ厚い切符は紛失防止に一役買っていたのかもしれないね。
    今の切符は薄いから、しょっちゅうポケットの中を探しまくってしまう。
    いや、そもそも切符自体買うことがほとんどなくなったなあ。
    これも時代の流れかな。

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