久々に出会った。
早く続きを読みたくて、読書が一日のいちばんの楽しみになる本に。
舞台はインド、主人公はスラム街に住む孤児の少年。
クイズ番組で全問正解して10億ルピー(約18億円)を獲得した主人公が、
いきなり逮捕されるところから物語が始まる。
いったいどういう背景でこうなってしまったのか、これからどうなるのか、
最初のうちはまったくわからない。
それが徐々に、ゆっくりひもをほどくようにして事情がわかるようになる。
本の中に広がるのは、冬のしんとした寒さの中に捨てられた主人公の姿、
狭くて蒸し暑くて、絶えず鼻をつく臭いが漂うスラムの風景、
異なる身分のものを、自分とは別の宗教を信じるものを、ちっとも受け入れない人々。
ワイロを渡せば事は丸く収まるし、施しを得るために子供にケガを負わせて稼がせる施設も存在する。
話せばわかる、努力をすれば報われる、ということはインドではほぼ絶望的なの? と思ってしまう、
ものすごいエピソードの数々だ。
でも、ちょっとした望みに主人公は賭けた。
「ファイナルアンサー?」というフレーズでおなじみのクイズ番組に出演するということ。
なんとしてでもお金を手に入れなければならない、理由があったからだ。
しかし、学校にも通ったことのない主人公がいくら強運だとしても、4問のうちから正解を導き出し、
それを10回連続して当てるというのは、まず無理な話だ。
なのにやり遂げた。
それで、逮捕された。
インチキしただろう、というあらぬ疑いをかけられて。
主人公は大事な局面でいつもなんとかなったし、なんとかしてきた。
ちょっとしたずるがしこさと、一瞬の判断と勇気、そして自分の信じるものを最後まで信じたことが
よかったのかもしれない。
まじめに道を切り拓こうとするだけではなく、ところどころでちゃっかり楽しようとするところが、
人間の本質そのものがにじみ出ていて、またいい。
それにしても、ラストにたどり着くまでドキドキしっぱなしで大変だった。
ようやく貧困ともおさらばだ! と思ったら、強盗に襲われたり、
もう絶対ダメだ、やられる! という瞬間に救いの手が差し伸べられたり、
ページが汗でしっとりふにゃふにゃになりそうで、あやうく本に多大なダメージを与えるところだった。
世界16カ国語に翻訳されたこの本はすでに映画化されているそうで、日本でも4月から公開されるとのこと。
登場人物やエピソードは若干違うようだけれど、これはぜひ観たい。
『スラムドッグ$ミリオネア』公式サイト
ちなみにこの本を知ったのは、Life is art.Art is life.というブログにて。
デリーに引っ越した陶芸家さんらしいのだけど、暮らしてみてわかったインドのゆかいな日常や、
おもしろスポットやらアートのことやら、あぁ、こういうインドを知りたかった! という情報が満載でうれしい。
2009.2.6 鎌倉
by かな子
おひさしぶりです。
映画は,トレインスポッティングのダニー・ボイルが監督しているんですよね。
映画もスピード感があって面白そうで,気になって調べていたら原作もかなり読み応えがあるとあって,
ちょうど読みたいと思っていたところでした!
早く読まなきゃー。
■RonRonさん
どうもご無沙汰してます。
そうそう、映画は監督と脚本がかなり豪華なので期待大!
4月が楽しみですね。
こっそり情報。
逗子図書館に、本、あります(笑)。
はじめまして。
ご連絡、そして私のブログを紹介してくださりありがとうございます☆
「ぼくと1ルピーの神様」私も一気に読んでしまいました。
フィクションのはずなのに、当時知りもしないインドの事のハズなのに、どこかとってもリアルで人間臭(”味”ではなく)あふれる内容に感じ、少年に巻き起こるありえないようなコトがもう人事(物語)ではなくなり、私も終始ドキドキしながら読んでいたように思います。
そして、そんな「大げさな」てな内容が実際にインドで垣間見れると思います。
私もHP・ブログ拝見させていただきました☆
ステキな写真が沢山あって見入ってしまいました。
南米は未知の世界だったのですが、トテモすてきな所なんですね~。色が元気。
いつか行ってみたいです。
来月入竺なのですね。
かな子さんが、インドをどう感じられるか、どうファインダーを通して見られるか、すごく楽しみにしております。
■aikaさん
こんにちは。
わざわざこちらにお越しいただき、ありがとうございます!
人間臭、行ったことがないのによくわかる気がします。
日本ではありえないことの数々に、いちばん出くわすことのできるのがインドじゃないかと常々感じていて。
楽しみでもあり、ちょっぴり恐ろしくもあり(笑)。
そして、色鮮やかといえば中南米もアジアも同類のようでいて、やっぱり異種という感じがします。
それを直接現地に身を置くことで確かめられたら、なんて思っています。
映画版は見ました。
多分あっちこっちはしょってあると思いますが、
日本人にはまったく馴染みのない(ハンサムでもない)役者を使ったことで、かえって真実味を感じました。ただ、リアリティとしては、ピュアな弟より兄ちゃんの方が実際にいそうです。
それにしても、インチキじゃないかと疑われて
いきなり●●という展開に驚きました。
クイズ番組が舞台となる映画には『クイズショウ』と
いうのもありましたが、私はこっちのダニー・ボイルの作品の方が好きですね。脚本には若干難ありなところもありましたが(まあ、映画版で時間制限があり、なぜ彼がそんなに正解が続くのかご都合主義に感じた部分もあったので。このあたり原作読んで確かめないと)、本作の演出、特にビジュアル面がいいです。
ダニー・ボイルは「シャロウ・グレイヴ」「トレスポ」「ミリオンズ」が好きでした。
■chokiさん
監督と脚本の仕事が冴えるとか、強力なタッグだからとか、かなり前評判がいいようですね。
でも、「トレイン・スポッティング」すら観ていない私には、比較のしようがない……(笑)。
あの壮絶な風景がどんな風に映像に落とされているのか。
そこに興味津々です。