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いつもは家で淹れているコーヒー。
たまには外で飲みたいな、と思って出かけたのは、家から歩いて数分のカフェ兼アンティークショップ「H&P」。
ここで過ごしていると、時間が経つのを忘れてしまう。
近所にいい店があるというぜいたくをかみ締めつつ、おいしいコーヒーをすする幸せ。


インド出発前にはまだオープンしていなかったが、以前より店主とは知り合いという縁もあり、オープン前からちょくちょく中の様子を覗かせてもらっていた。
旅の最中もどうなったのかが気にかかっていて、今年の3月末に無事オープンしたという知らせを聞いてブログ検索をしてみたら、評判も上々だった。
帰国後、さっそく出かけてみると、オープン前と変わらない空気が流れていてほっとする。
何度も出入りしているから何の抵抗もなく入っていけるのだけれど、この店のドアはどうにも開けるのをためらわせるオーラを放っているようだ。
帰国してから3回ほど訪れたが、これまでに入口まで来て入ろうかどうしようか迷った挙句に帰っていく人を幾度となく見かけた。
カフェ、という文字はあるものの、確かに外観はカフェらしいオープンな雰囲気とは言いがたいし、チラッと覗く限りでは古道具が乱雑に置かれた倉庫に見えなくもない。
しかし、勇気を出して(笑)中に入ると、ただ古いのとは一線を画した逸品があちこちに置かれている。
たくさんのもので満たされている空間は、殺風景なほどにそぎ落とされた中にぽつんといるのとは違って、心が緊張しなくて済むせいかとてもリラックスできる。
6人は余裕でかけられる大きなテーブル席でひとり読書にふけるもよし、カウンターのような長机に陣取って店主とおしゃべりするもよし。邪魔をしない程度のボリュームで流れる音楽をつまみに、早い時間から1杯、なんてのもオツだろう。



もしかしたら、すんなりドアを開けてやってくる人は、この店のことをすごく好きになるという予感をすでに持っている人かもしれない。
開けるのをあきらめた人は、店の雰囲気と自分の好みがうまくマッチしなかったか、ちょっぴり勇気が足りなかったかのどちらかかもしれない。

この前訪れたときはお盆の頃で、電球の熱と冷房の効きがいまいちなのとで暑かったが、秋の気配が感じられる今はのんびりくつろげるから具合がいい。
店の名前を冠した2種のコーヒーがあるので、ひとつずつオーダーする。
Hブレンドは少し酸味のあるもの、Pブレンドはダークロースト。
酸味のあるコーヒーはあまり好きではないのだけれど、ここのは酸味もあまりきつくないので素直においしいと思える。
ダークロースト系はもともと好きなので、文句なくおいしく感じる。

ちなみに「H&P」とはHenri & Pablo(アンリ・マティスとパブロ・ピカソ)から。
この店を切り盛りするヒゲオヤジ&ピンボケオヤジの略でもある、らしい。
ふたりのオヤジはどちらも話し好きで話題が豊富だから、いつもつい長居してしまう。
ひとりは強い美学をもった頑固オヤジ、もうひとりは誰にでも気軽に優しく接してくれるオヤジ。
こういうふたりだからこその絶妙なバランスが、またちょっとクセがあって面白い。

今度来るときは、おいしい魚とオヤジのネタを肴に、辛口のお酒で1杯やろう。
そう、ここで食べる魚はちょっとお値段が張るけれど飛びきりおいしいものを小細工せずに出してくれるという、これまたカフェらしくないメニューが売りなのだ。
すみずみまで行き渡る個性と、おいしいものがそろう「H&P」。教えたいけど教えたくない、そんなうれしい複雑さを感じさせる店がすぐそばにあるって、なんてぜいたくなんだろう。

注:不定休なので、遠方から訪れる人は電話をしてから行くことをオススメします。
2009.9.14 鎌倉

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