数日前の重たくて湿った空気が、ある記憶を呼び起こした。
「あ、この感じ、ホタルが飛んでいるかも」
それほど気温が高い日ではなかったものの、もしかしたら、という気持ちを抱いて19時半頃に近所の川に行ってみた。
思った通り、夜空に舞うホタルの姿が目の前に。
カメラを持参するとつい撮影に夢中になってしまうため、この日はただ眺めて楽しむだけにした。
翌日からはカメラと共に川べりに通うのが、夕食後の日課になった。
昨年まではホタルにあまり関心を示さなかったチビオトも、今年は「うわあ~」とうっとりした表情を浮かべながら、地面に座って観察するように。
「あ、あっちにも!」、「こっちにきたよ!」と、ほかの見物客に教えにいくなど、ホタルウォッチングに精を出していた。
ホタル見物の素晴らしいところは、暗がりで会った見知らぬ人とその場の空気を共有できること。
「向こうの川にもちょっと出ていましたよ」とか「今年は出るのがちょっと早い気がしますね」とか、二言三言会話を交わし、その後はまた川のほうに視線を移して、思い思いにホタルのいる風景を満喫する。
暑い夏がやってくる前のホタルを愛でる日々、もうちょっとだけ続きそうです。