「恋でもなく 愛でもないのに なぜか 忘れられない」
道路の反対側からもよく見える謎の文言。
道を渡って店舗の前まで来てみれば、輪をかけてインパクト大な外観にたじたじとなる。
一瞬入店をためらったが、仲良くしているPOINTWEATHERの店長・寺本くん、イラストレーターの松鳥むうさん、横浜・中華街のShort tripのおふたり、出張インド料理のmeCURRYさんなど、数多くの友人がこのお店を訪れては口を揃えて「すごくおいしい」と言うから、行かないわけにはいかない。
メニューはパキスタンのチキンカレー、一種類のみ。
水を使わず、塩とスパイスだけで鶏肉を煮込み、2泊3日かけて完成となるのだとか。
骨からスルリとほぐれ、ほろほろになった鶏肉を頬張ると、ぎゅっと旨味が詰まっていて、噛むとじゅわーっと口いっぱいにスパイスの味が広がる。
でも、特別に何かが主張するようなスパイシーさではなく、マイルドで、食べていると徐々にリラックスしていく感じ。
店主の竹迫さんと話してみたら、「ボリビアに住んでいた」とか「(修行先のカレー店を)追い出されて、なんとなく自分の店を始めた」とか、淡々ととんでもないエピソードを披露してくれて、これまた面白かった。
味も店主もクセになりそうなゴクラクカリー。
そうか。
冒頭の「忘れられない」というのは、知らぬ間にクセになる、ということなのか!
帰り際、レジ前で「月光レーズン」なるものを見かけた。
月の光だけで乾燥させたタジキスタン製の干しぶどうで、大変貴重なものだという。
(タジキスタンでは、太陽だと光が強すぎてぶどうがダメになってしまうとのこと)
しかも水に一昼夜浸けておくと、元に近い状態にまで戻るらしい。
家に着いてから一粒つまむ。
噛んでいるうちに、凝縮された甘みがじわじわと染み出してくる。
レーズンをもぐもぐしながら、昼寝したくなる陽気の中で、庭を眺めてぼんやりと。
ゴクラクの余韻を味わいながらの極楽気分は、最高の一言に尽きる。