鎌倉の出版社「港の人」が出版した、鎌倉市内のパン屋さんを紹介した本『かまくらパン』。
読み終えて、うっかり「ごちそうさまでした」と言いそうになり、苦笑してしまう。
食事をしたわけじゃないのに、ごちそうさまはヘンだよなあ。
でも、そう言いたくなったのは、おいしそうなパンがたくさん登場するから。
……という理由はもちろんだが、読みながらおいしいものを頬張ったときみたいな気分になったから。
パンの作り手に対する敬意や愛情が、味わいのある文章で綴られていて、久々に幸せな気持ちで読書タイムを楽しむことができた。
この本に掲載されているのは、1948年創業の老舗から、昨年オープンしたばかりのニューフェイスまで、鎌倉に根ざしたパン屋22店。
ハード系をメインに扱うお店、バラエティに富んだ菓子パンが人気のお店、昔ながらのパンを変わらずに提供してくれるお店など、得意とする商品はさまざま。
もちろん、パン職人になったきっかけ、お店を開いた経緯、どんな思いでパンを作っているかなど、それぞれの背景もバラバラだ。
同じパンひとつ取っても、これだけ違うアプローチの仕方があるんだなあ、と感心しつつ、でも「おいしいパンを届けたい」というのは、皆変わらない。
そんな各店に共通する大切な思いを、店主の人柄がにじみ出るよう静かに、丁寧にまとめてあるから、「食べてみたい」と思うのと同時に「店主に会ってみたい」という気持ちが芽生えてくる。
そして、パン屋を紹介するページのところどころに、パンにまつわるエッセイや詩が挟まれているのが、またいい。
しかもそれが大好きな石垣りんや長田弘の詩というのも、うれしいポイントのひとつ。
個人的な好みにぴったりフィットした一冊でとても気に入っているから、書店で平積みにされているのを見かけて、ちょっとでもディスプレイが崩れていると、ついきっちり並べ直してしまう(笑)。
近いうちに、馴染みのあのお店にも、まだ行ったことのない家から離れた場所にあるお店にも、この本を持って行ってみようかな。
せっかくだから、まもなく長い春休みに突入するチビオトにもこの本を見せて、どこに行くか相談しよう。
メイド・イン・鎌倉のおいしいパンを求めて、あちこち散策するのが、今から楽しみだ。
港の人 (2016-02-03)
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