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少し前の話になるが、最近読んだ旅関連の本でもっとも衝撃的だったのが『棄国子女 転がる石という生き方』。
といっても、旅行記とは少々趣の異なる内容だ。

著者の片岡恭子さんとはグアテマラで初めてお会いした。
話題が豊富でしゃべっていてとにかく面白く、博識な才女という言葉がぴったりの片岡さんには、帰国後『中南米スイッチ』の制作に協力をしてもらったり、片岡さんが主催するイベント「旅人の夜」にゲストとして呼んでもらったり、いろいろとお世話になっている。
が、彼女のことはあまりよく知らない。
フリーランスのライターをしていることはご本人から聞いていたが、別の仕事で頻繁に海外に出かけたり、ときどき家に引きこもったり、というツイートを見て、謎が深まるばかりだった。

その後、WEBで連載を始めたとの知らせを受けて、読み始めてみたら、内容が衝撃的で驚いた。
こんなに壮絶な生き方をしてきたのか……。
それからは更新が楽しみで、早く続きが読みたくて仕方がなかった。

失恋や母との確執が引き金となり、鬱状態になった片岡さん。
生きるか死ぬかというほどに追い込まれ、荒療治として中南米に向かった。
パタゴニアの雪山で遭難、アマゾンでの強烈な食中毒、コロンビアでは現金を盗まれ、ベネズエラで軍隊に拘束されるなど、人間ひとりに試練を与えるにしてもそれはちょっとやり過ぎでは、と思えるほどの出来事に直面する。
もし同じようなことが我が身に降りかかったら絶望して立ち尽くしてしまうだろう、と思わずにはいられない強烈なエピソードの数々が、心に深く重く突き刺さる。

死にたいと思っていたはずなのに、死にそうな場面にぶち当たるたびに自力で這い上がっていく。
災難に見舞われるごとに、生きるとは何かを少しずつ掴んでいく。

読後、「フゥーーーッ」と大きく息を吐いた。
不思議と心は軽い。
旅に行って人生が変わった、のではなく、片岡さんは旅に出て人生を変えたのだ。
だから、悩んでいる人に向けてさらっと言ってのける。
「逃げたらええやん」

もしこれからの人生で大きな壁にぶち当たることがあったら、迷わず海外に“逃げ”ればいいや。
そう思うだけで、いくらでも解決策が見つかりそうな気がする。

ちなみに関西出身の片岡さんのトークは、笑いを織り交ぜつつ、締めるところはビシッと締め、話のネタはいつまでも尽きず、といった感じで相当エキサイティング。
今後もさまざまなイベントに出演予定とのことなので、ぜひ足を運んでみてください。

棄国子女: 転がる石という生き方
棄国子女: 転がる石という生き方
posted with amazlet at 14.04.22
片岡恭子
春秋社

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