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Instagramでの過去の中南米旅のふりかえりが、ようやくブラジル編に到達した。
『中南米スイッチ』のまえがきにも記したが、ブラジルは人生初の長旅に出るきっかけになった思い入れの強い国。
ついでに言うと、これまで旅した中でもっとも長く滞在した国でもある。

ここ最近、立て続けに投稿しているのが世界的な近代建築家、故オスカー・ニーマイヤーの建築物。
完成から70年近く経っているものもあるが、いま見ても斬新で美しくて、改めて本物を間近で見られた幸福を噛み締めている。

さて、ブラジル訪問から14年が経過した今年。
ひょんなことから、ニーマイヤー建築をめぐっていたときの珍エピソードの真相が判明したので、紹介しようと思う。

それは、氏の建築を追い求めてクリチバ、サンパウロ、ブラジリア、ベロオリゾンチと回ってたどり着いたリオ・デ・ジャネイロでのこと。
この街にはかつての自邸〈カノアスの邸宅〉があるはずで、ここは絶対に見逃せないと思っていたのだが、行き方がいまいちわからない。
(2007年当時、スマホは持っていなくて、何かを調べるときはネットカフェに行くような時代だった)
ならばツーリストインフォメーションで聞いてみようと思い、市街地にあるオフィスに足を運んだところ、いとも簡単に住所が判明。
さらに、手持ちの地図に印までつけてくれた。
ここから割と近そうだ。よかったよかった。

……いや、なんだかおかしい。
写真で見る限り、カノアスの邸宅は緑に囲まれた立地のはずだが、今いるのは交通量の激しい道路沿いのビル街。
もしかして、全然違う場所を教えられた?

念のため、もう一度話してみる。
「オスカー・ニーマイヤーが、昔、住んでいたという、すっごい建築の家に、行きたいんだ!」と必死で伝えたところ、ほかのスタッフにも聞いてくれて、ようやく「ああ、あそこね!」とわかったらしく、バスでの行き方を教えてくれた。
ちなみにさっき伝えられた謎の住所は、現在の住まいだということが判明。
著名人の住所を、見知らぬ観光客にやすやすと告げて大丈夫なのだろうか。
と少々気になりながらも、せっかくなので現住所のほうにも行ってみることにした。

しばらく歩いて、ここだなという場所にたどり着いた。
ニーマイヤーデザインの特徴ともいうべき丸みを帯びた外観が印象的、と言えなくもないけれど、教えてもらわなければたぶん気づかない。
自宅とおぼしき場所で撮影された彼のインタビュー映像を見ていたこともあり、たぶんここで間違いないだろうという確信はもてた。(こちらの動画でも見られる
99歳(当時)の現役建築家がひょっこり建物から現れないかな、と数分待って出待ちしてみたものの、さすがにタイミングよく現れるわけもなく。
ま、でも一般的な観光スポットではないところに行けたというのは、なかなか面白かったのでは、と自己満足に浸りながらその場を後にした。

どうして現住所をあっさり教えちゃうのだろう、と当時は不思議に思っていたのだが、その理由を今年知ることになった。
たまたま観ていたテレビ番組で、ブラジル人の結婚について取り上げていたのだが……。
結婚が決まったら、重婚を防ぐ目的で「結婚の公示」として新聞に名前や住所が約1ヶ月掲載されるとのことだった。
これは有名人に限らず、一般市民も同様だという。
なるほど、こういう背景があるから、住所を公表する・されるのに慣れているということか。
ただし、さすがに昨今はそうはいかないかもしれない。
今年1月、ブラジルのほぼ全国民に相当する、2億人超の個人情報が漏洩したと報じられた。
今後はいかに情報を守るかが鍵になるはずだから、こんな出来事に出くわすことはないだろう。

初代iPhoneが発表され、世間を大いに賑わせた2007年の、ちょっとした珍事だった。

サイトにはニーマイヤーの写真をまとめたページがあるので、どうぞご覧ください。
ニーマイヤーに思いを馳せていたら、かつてキユーピーのCMに使われていたことあったなと思い出した。
You Tubeにあがっているので、こちらもぜひ。

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