自由学園は大正10年(1921年)創立の、幼稚園から大学部までの少人数制の一貫教育校。
「生活即教育」という精神のもと、自分で考え、体を使い、行動するためのユニークな取り組みが、多くの人から支持されている。
この学校とはいろいろ縁があって、ひばりヶ丘にある自由学園本校には何度も訪れたことがあった。
ただ、当時は建築への興味は皆無で、女学校として開校した当時の校舎、明日館の存在などまったく知らず。
のちにアメリカの巨匠、フランク・ロイド・ライトがこの校舎を手がけた建築家だと知ったときには、大層驚き、絶対に見にいこうと心に決めた。
……そう思いつつ、なかなか足を運ぶ機会がないまま10年以上が過ぎ、今回、やっと訪問するタイミングが巡ってきた。
池袋駅から徒歩で約7~8分、ビル街を抜けて周囲に民家が増えてきたあたりで、その建物は現れた。
現在の校舎を知っているだけに「あれ、意外に小さい……?」と一瞬思ってしまったが、都心の一角に、これほど緑豊かな庭と低層の建造物という組み合わせは大変贅沢だよなあ、と考えを改める。
建物に入ると、家具や建具の幾何学的デザインに目を奪われる。
静かに、でもしっかりと存在を主張していて素通りすることができず、一つひとつじっくり見て歩く。
床に敷かれているのは大谷石。
かつて大谷資料館を見学して以来すっかりこの石のファンになってしまい、思いがけずに出会えて興奮した。
やわらかい石のため、学生が念入りに掃除している姿を先生が注意した、というエピソードには思わずくすっとしてしまった。
全体的に天井が低いのが、ロイドの初期作品の特徴だとか。
でも、不思議と窮屈さは感じられない。
むしろ、奥行きがあるためか、空間が実際よりも広いような気がしてくる。
外に通じるドアに目を向けると、ちょっと歪んで見えるような……。
錯覚かな? と思って近づくと、幾何学模様にはめ込まれた一枚のガラスが古いもののようだった。
今となっては貴重なこの景色のゆらぎを、しばし堪能する。
見学に訪れた際、とある一室でベビーマッサージの講習会をやっていた。
明日館は建物を使いながら維持保存する「動態保存」のモデルになっているとのこと。
ほかにも結婚式やクラス会、コンサートにも利用されていると知り、たくさんの「使いたい!」という声に応じてくれる懐の広さに感激した。
さて、明日館にやってきたのは、自然やいきものをモチーフにしたものづくり・アートワークを手がけるsetoの展示「進化する縞縞展」を見るため。
明日館の隣にある「JMショップ」には、80年前に誕生した自由学園生活工芸研究所のオリジナル・テキスタイル『プラネテ』を使った、おなじみのグッズがたくさん並ぶ。
「盛夏」という名の生地だけれど、カンカン照りの太陽の暑さ、というより、木陰の心地良い涼しさで、店内にさわやかな風を運んでくれるようなさわやかな展示だった。
21日(日)まで開催中なので、明日館見学とセットで、ぜひ!
進化する縞縞展
2015年6月9日(火)~6月21日(日)
自由学園明日館JMショップ
東京都豊島区西池袋 2-31-3 1階 明日館敷地内
TEL/03-3971-7297
営業時間/10:00~17:00
定休日/月
自由学園生活工芸研究所
作家在廊日/6月20日(土)・21日(日・午後)
ワークショップ 「プラネテのはぎれを使って、ミノムシチャームをつくろう」
開催日/6月20日(土)
開催時間/申込不要・時間内随時受付
午前_10:30~12:00
午後_14:00~16:00
定員/各回15名(1日30名)
料金/お買い物してくださった方は無料・その他の方は500円
条件/未就学児の方は保護者の方と参加