先日、撮影の仕事で石巻に行ってきた。
東日本大震災の直前に、やはり撮影のため、石巻、女川町、南三陸町、気仙沼を訪れていたから、実に5年ぶりの再訪である。
震災直後に取材で会った方々の安否が気になって調べたが、大きな施設が無事だったことぐらいしかわからず。
少し時間が経ってからは、もし悲しい知らせに行き着いたらどうしよう、と思い、調べるのを控えていた。
あれから5年。
石巻行きが決まり、ようやくいろいろ調べようという気になった。
すると、近況がわからないお店が一部あったものの、海が目の前という女川の食事処が場所を移して営業再開していることなど、うれしい情報が見つかってほっとした。
石巻での撮影が無事終わり、帰るまで少し時間があったので街を散策してみた。
未だに被害の爪あとは少なからず残っているが、新しいお店ができるなど、新たな動きもいろいろ始まっているように感じた。
そして、偶然見つけたのが震災伝承スペース「つなぐ館」。
震災が起きた当時の様子を、ジオラマやアプリ、展示で知ることができる施設だ。
展示品のひとつ「シージェッター海斗」を見てハッとした。
片腕を無くしたこのキャラクター、5年前にも撮影したなあ……。
石巻には宮城県出身の漫画家・石ノ森章太郎さんのキャラクターが街中にあふれていて、石ノ森萬画館という施設もあるほど。
萬画館は取材先のひとつで、シージェッター海斗はそこのエントランスに立っていたものだった。
津波によって一時所在不明になっていた海斗が見つかったとき、街の人が喜んだという新聞記事が、展示品といっしょに紹介されていた。
そして、萬画館の再オープン時には入りきれないぐらいの人が集まったという。
石巻の人たちに愛されているキャラクターを前に、なんともいえない気持ちになった。
震災後、自分がしたことといえばわずかな寄付ぐらいで、直接の助けになることは何もなかったと、常々不甲斐なさを感じていた。
でも、やれることをやるしかない。
写真を撮って、それを見た誰かが実際に足を運ぶことにつながればいいじゃないか。
5年経って、ようやくそんな風に思えるようになった。